「断熱」や「気密」という言葉は、家づくりを考える中で耳にする機会が増えてきました。
では、「調湿」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。
家づくりにおいては、まだあまり馴染みのない言葉かもしれません。しかし、毎日を快適に過ごせる住まいを考えるうえで、温度と同じように大切なのが「湿度」です。
今回からは、調湿、湿度管理、湿度が私たちの暮らしにどのような影響を与えるのか、そして、なぜ家づくりに「調湿」という考え方が必要なのかをお話します。
「調湿」=湿度をちょうどよく保つ
湿度は、高すぎても低すぎても快適とはいえません。
一般的に、人が快適に過ごしやすい湿度には一定の範囲があるとされており、私たちの家づくりでは、秋田の気候も踏まえながら、おおむね40〜65%の範囲をひとつの目安として湿度管理を考えています。
湿度が高くなりすぎたときには水分を減らし、反対に乾燥したときには必要な水分を補う。
単純に「除湿する」のではなく、湿りすぎず、乾きすぎない環境をつくること。それが「調湿」という考え方です。
湿度計の「%」は、何を表している?
ここで少し、湿度の仕組みについて考えてみましょう。
私たちが普段、天気予報や湿度計で目にする「湿度60%」という数字。
これは、「相対湿度」と呼ばれるものです。
空気には、温度によって「抱えられる水分量」が変わるという性質があります。
イメージしてほしいのは、水を入れる「器」です。
暖かい空気は大きな器のように、より多くの水分を抱えることができます。一方、空気の温度が下がると器は小さくなり、抱えられる水分量も少なくなります。
相対湿度とは、その温度の空気が抱えられる水分量に対して、今どのくらいの水分が含まれているのかを「%」で表したものです。
一方、空気中に実際にどのくらいの水分が含まれているのかを「量」として捉える考え方を、「絶対湿度」といいます。
つまり、普段私たちが目にしている「湿度○%」と、空気中に含まれている水分そのものの量は、同じものではありません。
少し難しい話に感じるかもしれませんが、まず覚えておきたいのは、
「空気が抱えられる水分量は、温度によって変わる」ということ。
実はこの性質が、私たちが感じる暑さや涼しさ、さらには冬の「結露」にも深く関係しています。

同じ気温でも「感じ方」が違うのはなぜ?
気温が同じでも、「今日は蒸し暑いな」と感じる日もあれば、比較的過ごしやすく感じる日もあります。
なぜ、同じ温度なのに感じ方が変わるのでしょうか。
その仕組みを知るために、まず考えたいのが「人の身体と水分」の関係です。
私たちの身体は、暑くなると汗をかきます。その汗が皮膚の表面から蒸発するときに身体の熱も一緒に奪われることで、体温を調整しています。
ところが、空気中にすでに多くの水分が含まれている、つまり湿度が高い環境では、汗が蒸発しにくくなります。身体の熱をうまく逃がしにくくなるため、「蒸し暑い」と感じやすくなるのです。
反対に、湿度が低い環境では汗が蒸発しやすくなり、その際に身体の熱も奪われます。
つまり、私たちが感じる暑さや涼しさは、温度計に表示される数字だけでは決まりません。
同じ温度でも、空気中にどのくらいの水分があるのかによって、身体から熱が逃げる仕組みが変わり、体感にも違いが生まれるのです。
だからこそ、快適な住まいを考えるときには、室温だけを見るのではなく、「湿度をどのように保つか」まで考える必要があります。
湿度が高すぎると、住まいの中では何が起こる?
では、湿度が適切な範囲を超えて高くなると、どのようなことが起こるのでしょうか。
湿度の高い、じめじめとした状態が続くと、住まいの中ではカビやダニなどが発生・繁殖しやすい環境になります。
特にカビは、見える場所だけに発生するとは限りません。住まいの中に湿気が多い状態が続けば、室内環境にも影響を及ぼす可能性があります。
だからといって、「湿度は低ければ低いほどいい」というわけでもありません。
乾燥すると、何が起こりやすい?
冬になると、「肌が乾燥する」「喉がカラカラする」「ドアに触れた瞬間、バチッとした」といった経験がある方も多いのではないでしょうか。
空気が乾燥すると、静電気も起こりやすくなります。
湿度がある環境では、物の表面などにある電気が空気中の水分を通して逃げやすくなります。一方、乾燥した環境では電気が逃げにくくなるため、身体などに静電気がたまりやすくなります。
そして、たまった電気が金属などに触れた瞬間、一気に放電されることで「バチッ」と感じます。
これも、湿度が私たちの暮らしに影響しているひとつの例です。
湿度は高すぎても、低すぎても快適とはいえません。
だからこそ、一年を通して適切な範囲にコントロールする「調湿」が大切なのです。
「温度+湿度」で住まいの快適さを考える
快適な家というと、
「夏は涼しい家」
「冬は暖かい家」
というように、どうしても「温度」に目が向きがちです。
もちろん、温度管理はとても大切です。
しかし、ここまで見てきたように、同じ温度でも湿度が違えば、身体から熱が逃げる仕組みが変わり、私たちの感じ方も変わります。
だからこそ私たちは、断熱や気密、冷暖房だけではなく、「温度と湿度をどうコントロールするか」まで含めて住まいを考えることが大切だと考えています。
では、実際の家の中では、どのように湿度を調整していけばよいのでしょうか。
そして湿度管理は、そこで暮らす「人」だけではなく、実は「家そのもの」にとっても大切な役割を持っています。
次回は、私たちの住まいで行っている湿度管理の仕組みと、家を長く守るための「調湿」について、もう少し詳しくご紹介します。
